丸くやわらかい。

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ディアブロ3をプレイした。

ディアブロ3をプレイした。
なんということはない。かのBlizzardがディアブロオーバーウォッチをセールするぞと言うから、プレイしたのだ。


ディアブロはすごいゲームだ。海外大手ゲーム制作会社Blizzardの誇る名作シリーズ。MMORPGの先駆けにして、今なお数多くのゲーマーを魅了する大作。そうしたイメージはあるものの、実を言うと筆者はディアブロをプレイしたことがない。


面白い、らしい。名作、らしい。有名、らしい。それは印象に過ぎず、何一つ実体を持たない。伝聞に過ぎない。空虚なものである。
だから、ディアブロ3を買った。この機会にやってみようと思った。MMORPGの祖先たるディアブロの血を継ぐ、2008年にリリースされ、今なおプレイされる名作とやらをやってやろうかと発起したわけだ。

 

ゲームを始めると見下ろし視点のフィールドにチマッとしたプレイヤーキャラクターの姿が見える。テクテクと歩き、ボタンを押すことで武器で殴ったり、特技を使ったり、ローリングでの回避を試みたりする。ストレスフリーながらも、違和感の無い操作性である。普段ゲームをやらない人もすぐに慣れるだろう。


適当にストーリーを進めていくが、専門用語が多くイマイチ要領を得ない。昔、固有名詞だらけでプレイヤーを置いてけぼりにするストーリー展開をFF13のそれになぞらえて「パルスのファルシのルシがコクーンからパージ」などと揶揄していたわけだが、正直なところ、近いものを感じた。

前作、前々作をやっているとまた違うのだろうけど、自分には大差がないように感じた。だが、細かい所が分からず、固有名詞を覚えられなくとも、地獄の王の軍勢が地上へと溢れ出すシーンや、天使と悪魔の戦いなどムービーで盛り上がったり燃えるシチュエーションは所々あった。


細かい事は分からないけれど、NPCがプレイヤーキャラを褒めてくれるのも良かった。プレイヤーキャラが剣を振り回してバッタバッタと敵をなぎ倒し、無双さながらに大量の敵を特技で吹き飛ばす。NPCは口々に英雄だと、素晴らしい戦いぶりだと、これで救われると、ありがとうありがとうと口々に褒めてくれる。まぁ悪い気はしない。
総じて無双ゲーめいた特徴を持った普通のRPGだったように思える。大量に迫り来る敵をバッタバッタとなぎ倒し、どんどんレベルが上がり、NPCにベタ褒めされながらストーリーを進める。なんやかんやで世界の危機を救ってエンディングだ。意外と普通のRPGだったなぁ。まぁ面白かったけど、そんな名作だなんだと褒めるもんかねぇと不敬な独り言が出る。

 

クリア後、様子がおかしくなる。

今思えば、ここまではチュートリアルだったのだろう。


ディアブロが牙を剥く。数多の廃人を生み出したBlizzard Entertainmentの凶悪RPGが、真のポテンシャルを見せつけるのはクリア後だったのだ。
今までプレイしていたディアブロ3は「ストーリーモード」の、難易度「ノーマル」に過ぎない。クリア後、それ以上のものが開放される。ランダム生成されるクエストやダンジョンに延々挑戦できる「アドベンチャーモード」が始まる。難易度は「ノーマル」を越えて「ハード」「エキスパート」「マスター」辺りに手を出せるようになる。
ディアブロ3の様子がおかしくなるのは、レベルカンスト──ストーリーモードクリア時点でレベル50前後だったところから、もう20レベルほど上げて70に到達した辺りだ。

 

強い。敵が強い。そして、自分も常軌を逸した速度で強くなる。まず数字が大きい。新しい装備を付けると特定の技の威力が2000%上昇したりする。ストーリーモードでちびちびと強くしていた頃が嘘のようにインフレしていく。
ダメージ量は100万というレベルになっていく。ステータスの表示も“1000k”とかになってくる。無双ゲーをしていたと思ったらいつのまにかディスガイアになっている。


しかし、楽しい。レアアイテムを手に入れると滅茶苦茶な勢いで強くなる。
兜、鎧、肩当て、手袋、腕甲、腰帯、下衣、靴、指輪二つ、首飾り、メインハンド、オフハンド、それら全てに追加効果を与える宝石をつけるスロットまでもがある──レアなアイテムを手に入れる度に無駄に多いこれらの装備箇所のどこかがアップグレードされる。戦えば戦うほど強くなる。


戦う。宝物がザクザクと落ちる。鑑定する。レアアイテムだ!やったぁ!と喜び勇んで装備する。ステータスが上がる。ステータスが上がったのでもっと高い難易度で戦う。この繰り返しには、「数字が増えると嬉しい」という人間の根源的な欲求に激しく訴えかける何かがあるように見えた。


そして、これはまだ前段階である。期待ほどでは無かったと侮辱を受けたディアブロ3の、一度目の反撃である。


ディアブロ3は更におかしくなる。難易度に「トーメント」なるものが現れる。それまでと違う、レベルカンストに加えて強力な武具を揃えるのが前提の最凶難易度だ。それは低い順に「トーメント1」から始まり「トーメント16」まで16段階に細分化され、底無しの沼の如くプレイヤーを待ち構える。


数字が増え、最早この世に敵などいないかのように調子に乗り始めたプレイヤーも、完膚無きまでにボコボコにされる。硬いし痛いし数が多い。最強の特技でもHPゲージが2割程度しか減らせず、驚く間もなくモンスターの群れに囲まれてタコ殴りにされる。「回復しなければ!」とプレイヤーキャラが叫ぶものの時すでに遅し。もはや死あるのみである。筆者は「トーメント6」で完全に詰まったのを感じた。敵の攻撃力は高く、こちらの全力の攻撃も通らない。調子よく進んできた筆者も、歩みを止めてレアアイテム掘りとレベル上げに勤しむようになる。


レベル上げ?
レベルは70でカンストでは?


違うのだ。レベルそのものは70で止まるが、それとは別に「パラゴンレベル」なるものがどんどん増えていく。ここからは通常のレベルアップと違い、上がったぶんの数値を好きなステータスに割り振るシステムに変化する。レベルカンストを超えたところで、何故かキャラクタービルドの自由度が上がるのだ。パラゴンレベルはいくらでも伸びる。5000などに到達しているプレイヤーもいるらしい。底なしだ。


そして、セット装備というものがある。同系統の装備で身を固めると、ボーナスが付く。普通のレアアイテムで身を固めても強さが足りないなら、セットを揃えてボーナスを付けて対抗するわけだ。例えば、勇気の冠、勇気のガントレット、勇気のブリガンダイン、勇気のグリーヴ……勇気シリーズならば、こんな風に。
光の冠、光の心、光の意志、光の源……光シリーズならば、こんな風に装備を揃えていく。
こうしたセット装備はその一部分ですらレアな装備なため、集めるのは苦労する。レアアイテム掘りを沢山してようやく集まる類のものだ。これを目指して戦う。戦う。「トーメント」で受けた屈辱を返してやるべく、ドロップ品を根こそぎ奪っては鑑定する。
聞くだけだと終わりのないレアアイテム掘りにげんなりしそうなものだが、止まらない。何故か止まらない。おそらく、ディアブロ3というゲームは極めて快適に、プレイヤーが気分よく遊べるように設計されているのだ。周回が苦にならない。むしろ気付いたらグレーター・リフト(高難度のランダム生成ダンジョン)にもう一度、次こそは目当てのアイテムを引き当ててやるぞと潜り込んでいる。おかしい。本来、周回など苦痛でしかない筈なのに。気付けばダンジョンに入り、敵をなぎ倒し、出てくるアイテムを鑑定しては一喜一憂するサイクルを回している。

 

そんなこんなでようやくセット装備が揃う。念願叶ってついに揃う。セットボーナスにはダメージが15000%アップなどと書いてある。狂っている。狂っているのだ。常軌を逸したゲームバランスだ。こんなものでバランスなんて取れるはずがない。
とはいえ数字が上がったら試したくなるのが人の性。また、ダンジョンへと入る。1000万ダメージで倒せなかった敵が、10億ダメージの前に血しぶきを上げて0.2秒で肉塊へと変貌していく。笑う。笑いが込み上げてくる。笑いが止まらなくなる。大苦戦していた「トーメント6」のモンスターたちが一瞬で消し飛ぶ姿を見て高笑いしてしまう。面白い。数字が大きいと面白いのだ。


トーメント」はまだまだ続く。底無しの沼のように、そこから伸びる亡者の手が、ディアブロ3という名の深みへと引きずり込もうとする。

 

特技──アクティブスキルには更に5種類の追加効果から1つ選んで装着できる。数多のアクティブスキルから6つを選び、各ボタンに割り振る。更に4つのパッシブスキルと、レアアイテムの力を抽出することで装備できるようになる更に3つの追加効果がある。どれも選択肢は異様に多い。特定のスキルを猛烈に強くするセット装備もあり、それを基準にビルドが成されていく。セット装備の種類次第で全く違う構成になるし、同じセットでもある程度の必須級を除いてはプレイヤーの好みと状況によっていくつかの候補から好きに選んでいくものなのだそうだ。
そして、固定の効果を除き、同じ装備でも性能にバラつきがある。乱数次第で同じ装備でも天と地ほどの差が生まれることもある。セット装備を揃えるのはただでさえ大変なのに、だ。
セット装備を手に入れた辺りで認識が変わってくる。今まで雑に使ってきたスキルなどにも気を遣っていかなければいけないと。また楽しくなる要素が増えていく。最初はただレベルを上げれば良かった。次にレアアイテムを探すようになった。レアアイテムの中でも特に強力なセット装備を目指すようになり、それに似合うスキル構成やステータス割り振りへと思考が広がっていく。

 

ストーリーモードをしていた頃には「自分の周囲を回転するハンマーを発生させ、武器ダメージの320%のダメージを与える」というスキルだったものが、「敵に当たるたびに他のスキルのクールダウン時間が下がり、最初の3体に与えるダメージが更に200%増加し、判定が大きくなり、プレイヤーキャラに追従するように回転し、プレイヤーキャラとハンマーの間に武器ダメージの60%のダメージを受ける稲妻を発生させながら自分の周囲を回転するハンマーを発生させ、武器ダメージの320%のダメージを与える。それらはセットボーナスにより15000%、スキルにより20%ダメージが増加している」になる。このくらいインフレするといっそ清々しい気持ちになる。自然と笑みがこぼれる。そして、これは今後もっとインフレするだろうし、それでも倒せない敵が出るのだろう。

 

このゲームは危険だ。
もう一度言う。このゲームは危険だ。


軽い気持ちで買ってはならない。無双ゲーとかハクスラとかそんな好きじゃないし、まぁ軽く履修できればいいかな……などと筆者のような舐めたことを言って手を出してはならない。
2020年も終わろうという時にグレーター・リフトに籠って休日を使い切ってしまうような人間をこれ以上増やさないためにも、ここで警告するのである。