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ヒュージ・リーダーズ特集 ~今最もアツいカジュアルフォーマット~

皆さんは「タイニー・リーダーズ」というフォーマットをご存知だろうか? おそらく、知らないという方もいるだろう。2020年現在すっかり話を聞かなくなってしまったが、タイニー・リーダーズは統率者戦(EDH)をベースとした変則ルールであり、「3マナ以下のカードしか使用できない」という他にない特徴を持ったフォーマットだ。通常の統率者戦の半分、50枚のデッキで対戦し、低マナ域を中心としたスピーディなゲーム展開がウリなのだそうだ。

 

そんなタイニー・リーダーズを見て、ある男は言った。「タイニーリーダーズに対抗してヒュージリーダーズやらない?」それは彼の思いつきと反骨精神の現れでしかなかったのかもしれないが、その発想は波紋を呼び、1つのルールとして整備され、好事家たちの間で話題となり、今も研究と解析が行われているのである。

 

──ヒュージ・リーダーズ特集にようこそ!今日は好事家達の間で「今最もアツいカジュアルフォーマット」として評判のヒュージ・リーダーズを紹介していく。

 

2年寝かされたこのフォーマットが何故今になって突然話題になったのか、忘却の淵より蘇ったのかは定かではない。だが、突然起きたビッグ・ウェーブ(あるいはヒュージ・ウェーブと呼ぶべきか)、これに乗らない手はない。我々は常に新しい遊び方を求めているのだから!

先週末、旧枠モダンの大会のサイドイベントとしてヒュージ・リーダーズ対戦会を開いたところ、予想外の大盛況だった! この奇妙なフォーマットは概ね好評だったようで、多くのプレイヤーが独創的なデッキを組み、満足のいくゲーム体験をすることができたようだった。それを見て、私もこういった記事を書くことにしたのだ。

 

sites.google.com

 

ヒュージ・リーダーズの基本的なルールは上記を参照して欲しい所だが、特徴的なルールについてはこちらからも解説しておこう。まず、このフォーマットがヒュージ・リーダーズと呼ばれる所以となっている「土地を除いた5マナ以上のカードしか使えない」という最も重要なルールについて話すとしよう。これにより、通常の構築で見覚えがあるような軽いユーティリティカードの数々が使用不可能となる。これだけで普段と違ったゲームができる予感がしてくるのではないだろうか。


次に、「プレイヤーは統率者領域に4枚の《荒地》を持つ」というのも特徴的だ。ゲートウォッチの誓い当時のプレイヤーならば大量に余っているだろう《荒地》に意外な使い道ができたのは喜ばしいことだ。

ヒュージ・リーダーズでは5マナ以上のカードしか使えないが、5マナまで安定して土地を伸ばすのは中々に難しい。このルールは、誰もが安定して土地を伸ばせるようにする事で、事故で折角のゲーム体験を台無しにしてしまわないように設けられた救済措置であると言える。これによって我々はマナスクリューを気にせずゲームができるわけだ。勿論、色マナだけは自分の手札を使って供給しなければならないが。

なお、この《荒地》は統率者のように破壊、追放、バウンスなどをされても統率者領域に戻し、再度セットすることができる。

 

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現状荒地のイラストは2種類。それぞれコジレックとウラモグによって荒廃した大地が描かれている。
枠の有無のバリエーションがあるとはいえ、ヒュージ的にはもう少しあると嬉しいのだが。


あとは「50枚デッキ、1回フリーマリガンあり、初期ライフ25点、統率者ダメージのルールは無し」という点も重要だ。これは「タイニー・リーダーズに準拠する」という形のルールで、50枚デッキとフリーマリガンの組み合わせは些か安定性がありすぎる気もするが、今のところはルール変更の兆しはないようだ。存分に恩恵にあずかるとしよう。

「独自の禁止リストが存在する」点もデッキを組む上で留意しなければならない。統率者戦の通常の禁止カードに加え、下記が禁止カードとして制定されている。

 

《時間のねじれ/Time Warp
《時間操作/Temporal Manipulation》
荊州占拠/Capture of Jingzhou》
《永劫での歩み/Walk the Aeons》
《運命のきずな/Nexus of Fate
《隔離/Sunder》

 

見事に青ばかりだが仕方のないことでもある。安易な追加ターンはやめましょう、ということだ。

ここまで確認できたなら、あとはデッキを組み、プレイヤーを集め、対戦するだけだが……いきなり何万とあるカードプールを隅々まで確認させるような面倒なことを要求するのはクールではない。

まず、このフォーマットをイメージしてもらうためにも、今回は私含めた有志プレイヤーたちが組んだデッキを紹介しつつ、特有のテクニック等にも触れていこうと思う。

では、ヒュージの世界の一端を覗いてみよう!


さて、まずはアグロデッキのサンプルレシピを見ていただこう。

統率者は《秘儀を運ぶもの、パコ》。その相方である《熱心な秘儀術師、ハルダン》は3マナのカードであり、残念ながらヒュージ・リーダーズでは使えないが、《秘儀を運ぶもの、パコ》は速攻を持ち、殴る度に巨大になっていく、単独でも馬鹿にならないクリーチャーだ。これを湧血持ちのカードやオーラ、装備品、追加コンバットなどでバックアップして殴り切るのがコンセプトだ。初期ライフが25な事もあって中々の勢いで減ってくれる。舐めていると一気にライフを毟り取られる事だろう。

 

統率者 1
《秘儀を運ぶもの、パコ/Pako, Arcane Retriever》

 

クリーチャー 22
《手に負えない若輩/Incorrigible Youths》
《尊大なワーム/Arrogant Wurm》
《無謀なるワーム/Reckless Wurm》
《ギャサンの略奪者/Gathan Raiders》
《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》
《憤怒の天使アクローマ/Akroma, Angel of Fury》
《溶鉄鋼のドラゴン/Moltensteel Dragon》
《とどろくタナドン/Thundering Tanadon》
《切りつける豹/Slash Panther
《ワームの咆哮/Roar of the Wurm》
《名誉あるハイドラ/Honored Hydra》
《恨み唸り/Spitebellows》
《永遠神ロナス/God-Eternal Rhonas》
《破壊のオーガ/Wrecking Ogre》
《ザル=ターの豚/Zhur-Taa Swine》
《瓦礫鬼/Rubblehulk》
《雷足のベイロス/Thunderfoot Baloth》
《峰の恐怖/Terror of the Peaks》
《原初の嵐、エターリ/Etali, Primal Storm》
《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》
《アクームの怒り、モラウグ/Moraug, Fury of Akoum》
《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》

 

スペル 8
《強撃+脅威/Thrash+Threat》
《大神のルーン/Runes of the Deus》
《大群の怒り/Fury of the Horde》
《爆裂+破綻/Boom/Bust》
《滅殺の命令/Decree of Annihilation》
《歌狂いの裏切り/Song-Mad Treachery》
《エンバレスの宝剣/Embercleave》
《書かれざるものの視認/See the Unwritten》

 

土地 19
《統率の塔/Command Tower》
《魂の洞窟/Cavern of Souls》
《山賊の頭の間/Hall of the Bandit Lord》
《家路/Homeward Path》
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《奔放の神殿/Temple of Abandon》
《尖塔の庭/Spire Garden》
《モスファイアの谷/Mossfire Valley》
《火の灯る茂み/Fire-Lit Thicket》
カープルーザンの森/Karplusan Forest》
《怒り狂う山峡/Raging Ravine》
《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》
ドワーフ都市の廃墟/Dwarven Ruins》
《ヘイヴンウッドの古戦場/Havenwood Battleground》
《生けるものの洞窟/Zoetic Cavern》
2《森/Forest》
2《山/Mountain》

 

《大群の怒り》などは赤いアグロデッキにおける強い味方だ。1枚1枚のカードが大振りなヒュージ・リーダーズでは手札を使い切ることが難しく、手札をコストにするタイプのピッチスペルはいつにも増して強力だ。

とはいえ、5ターン目によーいドンで動き始めてはアグロ戦術の完遂など夢のまた夢だ。故に、ヒュージ・リーダーズは5ターン目までに如何にして動くかが構築において重要になってくる。5マナ以上のカードしか入っていないからといって5ターン目まで土地を置いてエンドするゲームではない、という事だ。むしろここでどうフライングするかがこのフォーマットの肝と言っても過言ではない。

 

サンプルレシピでは「1ターン目のドローがあり、統率者領域から《荒地》を置ける」というフォーマットの特徴を「毎ターン土地を置きつつも能動的に手札を溢れさせる事ができる」と解釈し、捨てることでフライングできるカードを先鋒として起用している。それに代替コストやコスト軽減などを持ったカードを掻き集めると……こんな連中がマナカーブを埋めることになるわけだ!

 

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出来事! 変異! マッドネス! フラッシュバック! 不朽! ファイレクシアマナ! そうそうたる顔ぶれだ。こんなクリーチャーたちが先陣をきるフォーマットはいくらなんでもヒュージくらいのものだろう。これらで早め早めに動き、盤面を固定するための「フタをするカード」で抵抗を抑え込み、殴り勝つのだ。《爆裂+破綻》《滅殺の命令》《王神の立像》……カードが重いからこそ、こうしたマナベースへの攻撃は時に再起不能のダメージを叩き出すわけだ。

 

次は、ヒュージ・リーダーズのメタゲームがしっかり機能している証拠として、がっちりとアグロ対策を固めたミッドレンジを紹介するとしよう。

 

統率者 1

《狼の友、トルシミール/Tolsimir, Friend to Wolves》

 

 クリーチャー 20

《スカラ狼/Skalla Wolf》
《ウルフィーの銀心/Wolfir Silverheart》
《吠え霊/Howlgeist》
《群れの牙/Fang of the Pack》
《狼の群れ/Wolf Pack》
《ケッシグの檻破り/Kessig Cagebreakers》
《吠える巨人/Howling Giant》
《トルシミール・ウルフブラッド/Tolsimir Wolfblood》
《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》
Avatar of Growth
《シェフェトのオオトカゲ》
《永遠神ロナス/God-Eternal Rhonas》
Earthshaker Giant》
《原始の守護者/Primeval Protector》
《酸のスライム/Acidic Slime》
《仇滅の執政/Foe-Razer Regent》
《巨大猿、コグラ/Kogla, the Titan Ape》
《古き知恵の賢者/Sage of ancient Lore》
《活力/Vigor》
《フェリダーの君主/Felidar Sovereign》

 

スペル 8

《踏み荒らし/Overrun》
《開花+華麗/Flower+Flourish》
《集団的祝福/Collective Blessing》

《狼育ち/Raised by Wolves》
《群れに餌/Feed the Pack》
《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》
《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》
《群れの声、アーリン/Arlinn, Voice of the Pack》

 

土地 21

《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《溺墓の寺院/Drownyard Temple》
《大瀑布/Cascading Cataracts》
《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds》
《裂け岩の扉/Riftstone Portal
《トロウケアの廃墟/Ruins of Trokair》
《ヘイヴンウッドの古戦場/Havenwood Battleground》
《ヒッコリーの植林地/Hickory Woodlot》
ギャレンブリグ城/Castle Garenbrig》
《樹上の村/Treetop Village》
《統率の塔/Command Tower》
《サングラスの大草原/Sungrass Prairie》
《豊潤の神殿/Temple of Plenty》
《まばらな木立ち/Scattered Groves》
《豪勢な大通り/Bountiful Promenade》
2《平地/Plains》
4《森/Forest》

 

統率者戦の醍醐味の一つは、統率者に合ったカードを探す事にあると私は思っている。《狼の友、トルシミール》は正にそういったカードを多数採用できるデッキだ。全てのカードが5マナ以上のルールでもアグロ・ミッドレンジ・コントロール・コンボのカテゴリーが存在するのは興味深い点だと言えるだろう。

有志の製作したこのデッキには《狼の友、トルシミール》で格闘をするためにマイナーな狼カードが大量に入っている。

 

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一見して非常に怪しいデッキに見えるが、実際に対峙した私の所感では、このデッキは強力なボードコントロール能力を有しており、ただ見た目が珍しいデッキというだけではない。また、このデッキを紹介しようと考えた理由の一つでもあるのだが、ヒュージ・リーダーズの強力な汎用カードも抜け目なく採用しているところも高ポイントだ。

《エルズペス、死に打ち勝つ》《太陽の勇者、エルズペス》のように単純なパワーカードもあれば、《古き知恵の賢者》のようなヒュージでこそ力を発揮するカードも抑えている。

注意深く見れば《シェフェトのオオトカゲ》で《屍肉あさりの地》をサーチし、5マナ未満で墓地対策とマナ加速を兼ねるテクニックや、手札を溢れさせることで《溺墓の寺院》をマナ加速として使用するなど、ヒュージ固有のギミックが教科書のように詰め込まれたデッキであることに気付くはずだ。

 

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先述の《秘儀を運ぶもの、パコ》と違い、3マナでクリーチャーを展開する代わりにマナ加速を行ったり、《ヒッコリーの植林地》といった枯渇ランドや、《トロウケアの廃墟》《ヘイヴンウッドの古戦場》のようなサクリファイスランド、ヒュージ・リーダーズの土地の中でも特に汎用的な《古えの墳墓》を介してクリーチャーを展開し、盤面の掌握にかかる。

 

土地のチョイスが個性的なのもこのフォーマットの特徴と言えるだろう。

ヒュージ・リーダーズのデッキには19枚程度の土地が採用されるが、デッキが目指す速度帯によってその内訳は大きく変わってくる。どの速度帯でも概ね1〜2ターン目にマナの使い途が無いことと、アンタップインしたいタイミングでは《荒地》をセットすればいいため、他のフォーマットと比較してタップイン土地のデメリットが少ない。その上、19枚の中に入れたい無色土地は多数あるわけで、あらゆるデッキが取捨選択を迫られることになる。これが土地枠に多様性がある理由だ。

占術ランドやオデッセイのフィルターランドが重要視され、バウンスランドやサイクリングランドすらも採用候補に挙がることがあるフォーマットだ。必ずしもデュアルランドとフェッチランドによるマナベースを必要としないのは、敷居という意味で重要なポイントだと言えるだろう。

 

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では次からはマナベースにも目を向けてもらうことにしよう。長期戦を意識した3色グッドスタッフ《冒涜されたもの、ヤロク》デッキをご覧あれ。

 

統率者+相棒 2
《冒涜されたもの、ヤロク/Yarok, the Desecrated》
《巨智、ケルーガ/Keruga, the Macrosage》

 

クリーチャー 18
《深き森の隠遁者/Deep Forest Hermit》
《錯乱した隠遁者/Deranged Hermit》
《流浪のドレイク/Peregrine Drake》
《吹雪の大梟/Blizzard Strix》
《熟考漂い/Mulldrifter》
《酸のスライム/Acidic Slime》y
《急嵐のトリクス/Thryx, the Sudden Storm》
《深海の破滅、ジャイルーダ/Gyruda, Doom of Depths》
《狙い澄ましの航海士/Deadeye Navigator》
墓所のタイタン/Grave Titan》
《害悪の機械巨人/Noxious Gearhulk》
《シェフェトのオオトカゲ/Shefet Monitor》
《霊気撃ち/AEthersnipe》
《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》
《パリンクロン/Palinchron》
《裏切りの工作員/Agent of Treachery》
《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》
《テラストドン/Terastodon》

 

スペル 12
《覆滅+複製/Repudiate+Replicate》
《遠隔+不在/Far+Away》
《約束の刻/Hour of Promise》
《意志の力/Force of Will
《ウィンドグレイスの裁き/Windgrace's Judgment》
《不連続性/Discontinuity》
《崇高な天啓/Sublime Epiphany
《開拓+精神/Spring+Mind》
《召し上げ/Expropriate》
《暗記+記憶/Commit+Memory》
《歯と爪/Tooth and Nail》
《不実/Treachery》

 

土地 19
《統率の塔/Command Tower》
《睡蓮の原野/Lotus Field》
《華やかな宮殿/Opulent Palace》
《ゼイゴスのトライオーム/Zagoth Triome》
《大瀑布/Cascading Cataracts》
《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》
《疾病の神殿/Temple of Malady》
《神秘の神殿/Temple of Mystery》
《溢れかえる果樹園/Flooded Grove》
《ダークウォーターの地下墓地/Darkwater Catacombs》
《溺墓の寺院/Drownyard Temple》
《無限地帯/Myriad Landscape》
《死者の原野/Field of the Dead》
《冠雪の森/Snow-Covered Forest》
《森/Forest》
《冠雪の島/Snow-Covered Island》
《島/Island》
《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》
《沼/Swamp》

 

《死者の原野》との噛み合いを考えつつ、《無限地帯》のような基本土地サーチを利用できるよう冠雪と通常の基本土地で採用カードを散らす典型的なテクニックが用いられている。

 

こと土地に関して青緑は様々な特権を持った色の組み合わせだと言えるだろう。《開拓+精神》は《豆の木の巨人》と共に3マナから5マナにジャンプアップできるカードの1つであり、こうした小技を挟みつつも基本土地をデッキから抜かない理由はそうした特権を活かすためのものだ。《覆滅+複製》と《不連続性》は《睡蓮の原野》と組み合わせる事で、このフォーマットでも最高に近い3ターン目の2マナジャンプアップを可能とする。

これに限らず、分割カードは左右の合計マナコストが参照されるため、ヒュージの世界においては極めて軽く優秀で、これらを多数採用できることが3色デッキが持つ1つのアドバンテージとなっている。このデッキで言えば《遠隔+不在》などは破格の軽さの妨害だ。

 

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青緑の特権と言えば、《巨智、ケルーガ》を採用できる点もその一つだと言える。ヒュージ・リーダーズはカード一枚一枚が重いため、そう簡単に手札を使い切ることはできず、得たハンドアドバンテージを活かすのは時間がかかる。そうした事情により、《巨智、ケルーガ》は「青緑であれば確実に相棒にできる」という、本家統率者での禁止カード《呪文追い、ルーツリー》に近しい性質を持ちながらも今のところはお咎めなしで放置されている。

実際プレイしてみると、確かに《ケルーガ》を出したいと思えるタイミングはそう多くない。早期に手札に加えても邪魔になり、後半はもっと別の制圧力のあるクリーチャーを出した方が良いケースが多いからだ。

 

しかし、このデッキにおいては《パリンクロン》と《狙い澄ましの航海士》による無限ブリンク・無限マナコンボからシームレスで無限ドローまで繋げられるという、唯一無二の重要な役割を担っている。《ケルーガ》を経由できれば、後は《酸のスライム》《テラストドン》《害悪の機械巨人》で盤面を更地にするなり、《深海の破滅、ジャイルーダ》でライブラリーアウトさせるなり好きにすればいい。

《狙い澄ましの航海士》はCIP能力持ちが多いこのデッキにおいては無限コンボを抜きにしても相性が良く、様々なカードと噛み合う。青緑を含む三色デッキの特権をフルに活用したグッドスタッフ的なデッキと言えよう。

 

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最後に現ヒュージ・リーダーズの悪役、最も危険視され、最もヘイトを買った男《急嵐のトリクス》を紹介しよう。

 

統率者 1
《急嵐のトリクス/Thryx, the Sudden Storm》

 

クリーチャー 8
《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》
《夢喰い/Dream Eater》
《大食の巨大鮫/Voracious Greatshark》
《吸収するウェルク/Draining Whelk》
《狡知/Guile》
《奔流の機械巨人/Torrential Gearhulk》
《真珠湖の古きもの/Pearl Lake Ancient》
《原初の潮流、ネザール/Nezahal, Primal Tide》

 

スペル 22
《意志の力/Force of Will
《全面否定/Fervent Denial》
《時間停止/Time Stop》
《不連続性/Discontinuity》
《水没/Submerge
《呪文詐欺/Spell Swindle》
《否定/Contradict》
《霧の中の喪失/Lost in the Mist》
《疑惑の裏付け/Confirm Suspicions》
《神秘の合流点/Mystic Confluence》
《崇高な天啓/Sublime Epiphany
《奪取/Desertion》
《徴用/Commandeer》
《呪文乗っ取り/Spelljack》
《霊気奪い/Aethersnatch》
《標本集め/Gather Specimens》
《終局の始まり/Commence the Endgame》
《静寂の命令/Decree of Silence》
《不実/Treachery》
《カーンの経時隔離/Karn's Temporal Sundering》
《時間の熟達/Temporal Mastery》
《時間の大魔道士、テフェリー/Teferi, Temporal Archmage》

 

土地 19
《睡蓮の原野/Lotus Field》
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《無限地帯/Myriad Landscape》
《溺墓の寺院/Drownyard Temple》
《眷者の居留地/Bonder's Enclave》
《大瀑布/Cascading Cataracts》
《神秘の聖域/Mystical Sanctuary》
《孤立した砂州/Lonely Sandbar》
11《島/Island》

 

《急嵐のトリクス》はまるでヒュージのために生まれて来たかのような能力の統率者だ。5マナが揃い次第《急嵐のトリクス》を出し、カウンターを構えながら4/5のボディを盾に、あるいはアタッカーにしながら盤面を掌握していく。

 

《急嵐のトリクス》デッキの特徴は、執拗なまでに投入された大量のカウンターだ。ヒュージ・リーダーズではカウンターもヒュージであり、1~3マナのカウンターが好まれる通常の構築から逸脱したラインナップが特徴的だ。普段のマジックでは箸にも棒にも掛からないようなカウンターも混ざっているが、侮るなかれ。重いぶんだけ打消しに何らかのオマケがついてくる。極論を言えば、動くのが1人だけならカウンターを撃ち込み続けるだけでボードもハンドも差が広がり続けるのである。

 

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じっくりと腰を据えて構え、打ち消しながらアドバンテージを取り、盤面を作っていく。そして、攻める時は追加ターンを交えて一気に削りに行くような、緩急のあるクロックパーミッション戦術は人気が高い(使われている側からは不評だが……)。

ヒュージ・リーダーズでは使い勝手の良い追加ターン系が軒並み禁止されているが、トリクスの動きを見ていると確かにこれらの禁止は英断であると心から思うのである。

それだけに、卓全員からタコ殴りにされても泣かないように。

 

 

さて、今回はこのフォーマットに興味をもってもらうために、デッキレシピの紹介と共にフォーマット特有の小技や知識の紹介をさせてもらったわけだが、読者の皆もなんとなくヒュージ・リーダーズについて分かってきたのではないだろうか?

 

このフォーマットの今後については、ハッキリ言って分からないとしか言いようがない。旧枠モダン大会のサイドイベントの後、再度交流会を開いて遊び倒したものの、参加者は皆満足していて、特にバランスの問題も感じられなかったようだ。《ドリーム・ホール》などの危険性は指摘されていたが、追加ターンのような「明らかにダメ感」はないため、そう簡単に禁止が増える事もないのではないだろうか。

 

反して、ポジティブな話題は多い。その最たるものが統率者レジェンズだ。

《秘儀を運ぶもの、パコ》がそうだったように、共闘関連のカードは相方が欠落していたり、選択肢が少なかったりと現状ヒュージ・リーダーズにおいて影の薄いメカニズムだが、統率者レジェンズではレパートリーが一気に増え、現在公開されている分だけでフォーマットリーガルの共闘持ちは4倍以上(!)に増える予定だ。他にも既にヒュージでの注目カードがいくつも話題に上がっている。読者の皆もヒュージの知識を身につけることにより、マナコスト5以上のカードを見る目が変わり、もっとスポイラーが楽しくなるに違いない。

 

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なんと共闘持ちが3枚しかない。ちなみに~との共闘は10枚。
その中でペアが成立しているのはたったの3ペアで、4枚は片割れだけになっている。

 

また、これは私がもっとも推している所なのだが、ヒュージ・リーダーズは家にあるストレージ内に放置されているようなカードで組み易く、敷居が圧倒的に低い。

デッキレシピを見てくれれば分かるように、高額カードは本当に少ないのだ。《意志の力》と《古えの墳墓》が高めの汎用パーツだが、それ以外で汎用高額カードは少なく、フェッチランド+デュアルランドorショックランドすらも必要ないというのが、現状のコミュニティでの共通見解だ。その他のパーツにしても安いものは100円どころか10円のレベルで、1000円を超えるカードすら多くはない。

入っているカードもスタン当時は1000円、今は100円といったカードが多い。そのためか、どれだけ真面目に組んでもカジュアルな雰囲気を纏うのも良い所だ。私はこれを「ルールによって舗装されたカジュアル統率者」と表現している。旧枠モダンブロールも似た空気感だったが、やや地味だったそれと違い、ヒュージは敷居の低さが段違いで盛り上がり所も多い。アクションも妨害も派手で、ライフや盤面が一気に吹っ飛ぶこともしばしばある。

 

そういうわけで、私はこれを仲間内で楽しむのに向いた面白いフォーマットだと思っている。それに、まだまだこのフォーマットは研究段階だ。最強の構築を探して解析に勤しむも良し、余ったカードをかき集めて仲間内でカジュアルに楽しむも良し。私たちヒュージプレイヤーは情報を欲している。この記事を読んでいる皆もぜひ触ってみて、これだと思うカードやコンボ、このフォーマットについての意見を発信してみてほしい。