丸くやわらかい。

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【EDH】《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》~統率者環境今昔~

今回は統率者戦(EDH)のお話です。 

 

注意書き

 

当記事(需要次第ではシリーズになるかもしれません)で取り上げる統率者はレベル8以上を目指すことのできる“強力な統率者”とは言い難いものです。

パワーレベルは6〜7を想定しており、一線級とは言えないまでも、こんなデッキもあるぞ! というような体でデッキをご紹介していきます。

なお、パワーレベルの概念が分からない/知らないという方は公式の発表した下記のレベル分けをご確認ください。

 

 

パワーレベルは"高いと良い"というものではなく、「デッキの強さでざっくりとレベル分けして同じくらいの強さの人たちで遊びましょう」というもので、様々なスタンスが入り混じる混沌としたEDH界隈において、マッチングの最適化を目指そうとする概念です。

これも曖昧な部分が多く、完璧なシステムとは言い難いですが、指標にし易いために界隈では頻繁に使われています。

私の記事でも今後出番が多くなると思われる概念ですので、どうか一読ください。
また、当記事の基本的なスタンスは以下の通りです。

 

・有志によるEDHのTier表(下記参照)を参考におおまかに Fringe Competitive(“ガチ手前”くらいの意味合いですね)以下のジェネラルを主に取り扱います。

https://tappedout.net/mtg-decks/list-multiplayer-edh-generals-by-tier/

 

・値段的な妥協はできる限りは無しの方向でやっていきます。私個人が値段的に手が届かず使えないカードがある場合はそれについても触れていきます(その場合は想像での評価となってしまいますがご了承ください)。

 

・EDHの世界は極めて奥深いものです。ある程度自分で回したデッキを取り上げる予定ですが、一般プレイヤーである私では網羅しきれない部分もあるかもしれません。その場合はコメント等でそっとご教示頂けますと、ひっそり記述を追加するかもしれません。

 

・EDHの環境はコミュニティにより様々で、それによってデッキリストに大きく差が出るのがこのフォーマットの醍醐味でもあります。そのため、デッキリスト(特に妨害枠)は必ずしも読者の皆さんの環境に沿ったものではありません。

 

・ご紹介したデッキを使用する際はレベル8以上のデッキにメタメタにやられても泣かないようにしましょう。特に3ターンキル上等の環境ではいくらなんでも分が悪いです。ご自身の環境と相談しつつ「やれそうかどうか」判断してください。

 

 

注意書きはここまでです。

EDHは様々なスタンスのプレイヤーがいて、様々な楽しみ方が許容されるフォーマットです。住み分け、環境、多様性、大事にしていきましょう。

以上をご理解頂けましたら、本文にお進みください。

 

《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》

 

EDHと言えば、即死コンボというイメージがつき纏います。

 

EDHにおいて相手プレイヤーを3人打ち倒し、頂点に立つにはおよそ120点ものダメージを与えなければならず、統率者ダメージに限っても合計63点もの打点が必要です。そう考えると、確かに殴る時間で無限コンボを揃えてしまう方が手っ取り早く感じますよね。

 

しかし、統率者で合計63点ダメージを与えて全員殴り倒そうとする、俗に"殴りジェネラル"と呼ばれる統率者たちに魅了された者たちは数知れません。

今回は、そうした統率者たちの中から(私にとっても思い出深い一枚である)《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》をご紹介いたします。

 

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Thrun, the Last Troll / 最後のトロール、スラーン (2)(緑)(緑)
伝説のクリーチャー — トロール(Troll) シャーマン(Shaman)

この呪文は打ち消されない。
呪禁(このクリーチャーは、あなたの対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象にならない。)
(1)(緑):最後のトロール、スラーンを再生する。

4/4

 

《スラーン》は4マナ4/4という一般的なサイズのクリーチャーではありますが、特筆すべきはその驚くべき耐性能力です。

 

「打ち消されない」ためにカウンターは意味をなさず、

「呪禁」を持つために除去の対象にならず、

「再生」によって戦闘で討ち取ることも困難です。

 

こうした耐性能力はつまり、安心して殴りに行けることを意味します。

一度除去されると一気に失速してしまうのが殴りジェネラルの弱点ではありますが、その点《スラーン》はEDHで一般的に使用される様々な除去に耐性を持ち、除去を怖れず強く攻めていけるわけです。

 

まずはデッキレシピをご覧あれ。 

 

統率者 1

《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》

 

マナ加速 18
《魔力の墓所/Mana Crypt》
《太陽の指輪/Sol Ring》
《魔力の櫃/Mana Vault》
《東屋のエルフ/Arbor Elf》
《繁茂/Wild Growth
《楽園の拡散/Utopia Sprawl》
《疫病のマイア/Plague Myr》
《精神石/Mind Stone》
《自然の知識/Nature’s Lore》
三顧の礼/Three Visits》
《不屈の自然/Rampant Growth
《北方行/Into the North》
《秋の際/Edge of Autumn》
《探検/Explore》
《献身のドルイド/Devoted Druid》
《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
《図書館の大魔術師/Magus of the Library》
《明日への探索/Search for Tomorrow》

 

強化 24
《狂暴化/Berserk
《怨恨/Rancor》
大薙刀/O-Naginata》
《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》
《審問官のフレイル/Inquisitor’s Flail》
《記憶の仮面/Mask of Memory》
《ブランチウッドの鎧/Blanchwood Armor》
《的盧馬/Riding the Dilu Horse》
《猪の陰影/Boar Umbra》
《野生の誓約/Vow of Wildness》
《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》
《祖先の仮面/Ancestral Mask》
ナルシシズム/Narcissism》
《炎叫びの杖/Fireshrieker》
《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》
《激励/Invigorate》
《熊の陰影/Bear Umbra》
《高まる残虐性/Increasing Savagery》
《大軍の功績/Triumph of the Hordes》
《樫の力/Might of Oaks》
《魂の力/Soul’s Might》
《狩られる者の逆襲/Revenge of the Hunted》
《強大化/Become Immense》
《圧倒する暴走/Overwhelming Stampede》

 

妨害 16
《自然の要求/Nature’s Claim》
《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》
《捕食/Prey Upon》
《呪われたトーテム像/Cursed Totem》
《古えの憎しみ/Ancient Animus》
《無のロッド/Null Rod》
《冬の宝珠/Winter Orb》
《原基の印章/Seal of Primordium》
《ヴィリジアンの堕落者/Viridian Corrupter》
《活力のカルトーシュ/Cartouche of Strength》
《減衰球/Damping Sphere
《ドライアドの歌/Song of the Dryads》
《刻み角/Manglehorn》
《内にいる獣/Beast Within》
《三なる宝球/Trinisphere》
《からみつく鉄線/Tangle Wire

 

リソース関連とサーチ 9

《輪作/Crop Rotation》
《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》
《たい肥/Compost
《森の知恵/Sylvan Library》
《狩人の眼識/Hunter's Insight》
《調和/Harmonize》
《魂の威厳/Soul's Majesty》
《原初の狩人、ガラク/Garruk, Primal Hunter》
《狩人の勇気/Hunter's Prowess》

 

土地 32
《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus
《先祖の院、翁神社/Okina, Temple to the Grandfathers
《闘技場/Arena》
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《ならず者の道/Rogue's Passage》
《宝石の洞窟/Gemstone Caverns》
26 《冠雪の森/Snow-Covered Forest》

 

 解説

 

このデッキは、統率者である《スラーン》をただただ強化し続け、殴り切ることをコンセプトとしています。

基本的な動きの解説と行きましょう。まずは3ターン目に安定して《スラーン》を着地させます。この際に《魔力の墓所》《太陽の指輪》《魔力の櫃》か《東屋のエルフ》と《繁茂》《楽園の拡散》のセットを引ければ2ターン目の着地が可能になります。

 

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1マナから3マナのジャンプアップでは《スラーン》の着地ターンは早まらず(1→3でも2→4でも結局3ターン目になってしまう)、無理に2ターン目着地を目指そうとすると《睡蓮の花びら》や《Elvish Spirit Guide》のようなカードにデッキの枠を多数取られてしまい、デッキが大幅に不安定になってしまいます。

そのため、1マナのマナクリーチャーは比較的現実的なラインで着地が早まる可能性のある《東屋のエルフ》のみを採用しています。

 

その代わりに《スラーン》が信じるものは土地です。《不屈の自然》を始めとした2マナの土地加速や土地につけるオーラエンチャントを使って2マナから4マナへのジャンプアップを想定しています。

ここでの裏目はエンチャントを貼った《森》を割られることですが、ここで妨害を挟むには《露天鉱床》のようなカードを切るしかありませんし、このターンで敢えて《スラーン》の土地を狙って割ってやろうと考えるプレイヤーは少ないでしょう。

 

2ターン目の《不屈の自然》に打消しを当てるような酔狂なプレイングも、(《スラーン》が卓内で明らかに最強という異常事態でもなければ)無いと考えていいでしょう。

以上の理由により、3ターン目の《スラーン》着地はほぼほぼ確約されていると言っても過言ではありません。

 

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《スラーン》を着地させることができたなら、次のターンには彼のパワーに+3修整を加えて7点ダメージを与えます。7点というのは重要で、EDHにおいての統率者ダメージ21点を3回の攻撃で達成できるラインとして知られています。

《腐れ蔦の外套》《猪の陰影》《大薙刀》《野生の誓約》……どれも見た目はパッとしないオーラエンチャントですが、パワーを+3できるという点で効率は悪くありません。

 

そして、次のターンにパワーを更に+7、あるいは二倍、あるいは二段攻撃を与えて14点──そう。これで1殺です。後は残りを順番に殴り倒していくだけですね。

どうです、簡単でしょう? 実に豪気なデッキではありませんか。

 

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とはいえ、そう上手く行くとも限らないのがこのゲームの面白い所です。

 

7点+14点=21点。これは対戦相手がブロッカーを一切展開していない前提の理想的な回りであり。そう毎回上手く行くわけではありません。

その場合は妨害を挟み、雑多なブロッカーをすり抜けるために回避能力を付けることで対応します。妨害が上手く刺さってゲームが泥試合になってしまえば、巨大で処理し難いスラーンに勝利のチャンスが巡ってくることでしょう。

 

妨害枠は環境次第ですが、基本的には置物でコンボを止める事と、格闘による除去を意識しています。

《闘技場》は何度でも使える格闘であり、《スラーン》がある程度大きくなりさえすれば、統率者の依存度が高いデッキを封殺する事もできます。《輪作》でのサーチに対応しているところも良いですね。《冬の宝珠》や《からみつく鉄線》での時間稼ぎも侮れません。殴れる回数が数回増えるはずです。

 

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トランプルを付与する装備品やオーラは勿論の事、妨害とアドバンテージ源とプロテクション付与を兼ねる《火と氷の剣》や、土地枠でアンブロッカブルを付与する《ならず者の道》を使ったり、《的盧馬》で馬術をつけてみたりと、あの手この手で《スラーン》の攻撃を通します。

 

《滅び》や《神の怒り》はともかく、《サイクロンの裂け目》や《毒の濁流》は族霊鎧でも防げず、非常に厄介です。コンボを止めたら、その隙にそういうデッキから順番に倒していきましょう。幸いにして《スラーン》は4マナであり、即座に出しなおす事も苦にはならないでしょう。

 

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残るはクリーチャーサイズを参照するタイプのドローカードや《師範の占い独楽》や《森の知恵》などのリソース確保用カードで埋めています。

 

また、《スラーン》ではなく感染持ちのクリーチャーを強化しての突然死も狙えるようになっています。マナクリーチャーを兼任する《疫病のマイア》、妨害を兼任する《ヴィリジアンの堕落者》、上述のリセット呪文の影響を受けにくい《墨蛾の生息地》などですね。

おまけ程度ですが、本来の役割に加えてプラスアルファがあるのは良いことです。

 

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……さて、ここまで長々と《スラーン》EDHの解説をしたわけですが、実はここまでが前置きです。

デッキレシピについて、ある程度MTGをやっている方は違和感を感じると思うのです。具体的には「ここ最近のカードが殆ど入っていないこと」に。

 

とても個人的な事ですが、理由はあります。

私のリアルの事情(転職と引越し)でよく仲間とEDHをしていたショップから物理的に離れることになってしまい、リアルでEDHをする機会はここ2年近く大きく減っていたのですが、最近別のコミュニティ内でEDHブームが起き、Discord等を使って、当時よりもカジュアル寄りではありますが、またプレイするようになりました。

 

その際に掘り起こしたデッキがこの《スラーン》デッキなのです。

 

環境の変化について

 

実際の所、《スラーン》はレベル6、ギリギリ7くらいが限界の統率者だと私は思っています。3ターン目に着地して、5ターン目に1人倒すような単色デッキが上を目指すのはとても、とても難しいのです。

ただ、格上に囲まれたら勝負にならないというようなデッキであっても、1人格上が混ざる程度なら戦えるようにしてやりたいというのは、心情的にいちプレイヤーとしては分かっていただける方が多いのではないか、と思っています。

的確に妨害札を当て、相手の引きがぬるければ勝ちを拾えるかもしれない程度に構築したいのです。二年近く放置しておいて何ですが、マジックに対するモチベーションが高かった所に、更に久しぶりにEDHをやれる環境が整った事で私は燃えていました。となれば仮想敵や環境についても勉強するしかありませんよね。

 

ここ最近でEDH界隈を大きく変えたものと言えば、マナを支払わずに唱えられるピッチスペルの増加が挙げられるでしょう。“モダンホライゾン”のピッチスペルと“統率者2020”の統率者参照型ピッチスペルのことですね。

以前より《否定の契約》や《精神的つまづき》などのピッチスペルは使われていましたが、ここ数年で増えた《否定の力》と《激情の後見》はターンを跨いでマナを支払ったり、範囲が狭いなどのデメリットもなく、《意志の力》にすら匹敵する汎用性を持っています。

 

《偏向はたき》や《致命的なはしゃぎ回り》《活性の力》も妨害カードとしては破格のスペックをしており、「皆フルタップだったから《時間のねじれ》を撃ったら《偏向はたき》が飛んできて奪われた」というような失敗談は後をたちません。

 

高レベル帯の卓でも日常的にそうした妨害の撃ち合いが起きるようになり、それらの多くはEDH定番パーツとして名を連ねることとなりました。

現行で販売されている構築済みを買うだけでマナを支払わずに否認や追放除去や対象変更が撃てるようになるのですから、とんでもない時代になったものですね。

 これら新時代の妨害カードたちはEDHにおける一般的な妨害手段のランクを一段階(あるいはそれ以上)高めました。カウンターも、除去も、対象変更も、置物破壊も、現在のEDHでは当然のように“フルタップ状態から撃たれるもの”になったのです。

 

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また、全てのアーティファクトの起動型能力を停止させる《無のロッド》と《石のような静寂》の類似品として《溜め込み屋のアウフ》と《大いなる創造者、カーン》が加わりました。

これで《スラーン》のような緑単のデッキが使用できる《無のロッド》は3枚。更にサーチを合わせれば、それ以上の安定度でEDHにおいて頻繁に使用されるマナアーティファクトを機能停止に追い込むことができます。

かつて1/99の確率で手札に加わるものでしかなかった《無のロッド》は緑単においてすら当時の数倍の確率で戦場に出ることになるのです。

 

最近の妨害札は本当に強力です。緑単色の《スラーン》ではピッチスペルは《活性の力》程度しか使えませんが、《無のロッド》の亜種が増えたのは明確な強化です。他力本願な話ではありますが、妨害が強くなった事で自分でない同卓のプレイヤーが無限コンボでの決着を止めてくれる可能性も高まったとも言えます。

 

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では、そうした妨害の標的、7~8レベルの仮想敵とは一体誰なのか。

EDHから長く離れていたプレイヤーは意外に思うかもしれませんが、たとえば《悟った達人、ナーセット》、たとえば《大渦の放浪者》などが該当します。もう随分と昔の話になってしまいましたが、彼らが彼女らが環境を牽引する強力な統率者の代表として知られていた時代もありました。

そんな彼らが凋落した理由、少し上に書いたような妨害札の増加と激化もその一因だと言えるでしょうが──実際のところ、単純に"もっとヤバイ奴ら"が数多く登場してしまったのです。

 

レベル9〜10帯のデッキはコンボでの速度勝負もアドバンテージ勝負もできるようなオールマイティ型が殆どです。これらは妨害が上手く、コンボが上手く、軽く、場合によっては共闘でゲーム開始時点で一枚ぶんの差をつけ──つまり、異様に柔軟性が高いのです。

コントロールもコンボも1級品。それがレベル10。生まれながらの強者たちです。
 

あるいは、数多あるコンボデッキの中でも特に速い、安定している、妨害しにくい、リカバリーが容易などの明確な強い特徴をもった格上のデッキ、言うなれば最上位のコンボデッキもまた、レベル9〜10に該当します。

彼らは生半可な妨害では止まらないエリート中のエリートです。上位に食らいつけるような連中は本当に限られた数しかいないのです。

 

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強力な妨害の増加や圧倒的な強者たちの登場によって割を食ったのは、かつての高速コンボ組です。《悟った達人、ナーセット》や《大渦の放浪者》など、かつて“強力な統率者の代表”とされてきた面々は時代が進むと共に追いやられ、今はレベル7〜8ラインと評価されるようになりました。

手札を全て使って安定して3キルできるようなデッキ(俗に言う"オールイン"と呼ばれるもの)は、妨害を抱えながら安定して3キルが可能なレベル9~10に属するデッキに太刀打ちできないのです。

 

レベル分けというのは本当に便利な制度です。昔は曖昧な認識をされていたデッキの強さが、ある程度しっかりとした基準のもとランク分けされるようになったのですから。海外のTier表などはそうした試みの一つだったわけですが、日本でここまで一般化、浸透したのは初めてなのではないでしょうか。何せ公式が提唱しているわけですからね。

 

そうしたレベル分けが一般化したのもあり、もちろん《スラーン》はレベル9〜10帯のデッキを相手にする必要はありません。そもそも構築段階でそこまで高いレベルの相手を仮想敵としていませんから。

彼らも《無のロッド》一枚で大打撃を受けるようなデッキなら良かったのですが、そういうわけでもありませんしね。

相手側もレベルに開きのある《スラーン》とのマッチングを望んではいないでしょう。はっきり言って10回、いや20回やっても1度も勝てないかもしれません。注意書きにも書いた通り、レベル分けとはマッチングの最適化のためにある概念ですから、通常の構築と違って、6~7レベルのデッキが最上位レベルを想定する必要は無いのです。

 

しかし、しかしです。かつてEDHの華でもあったマナアーティファクト高速大量展開からのオールインコンボや、通ればゲームが終わる統率者たち──静かに主役の座を追われることとなった彼らは、そうした機械的なランク付けによって、今や私たちレベル7帯の隣人となっています。

 

彼ら彼女らもまた、"Fringe Competitive(ガチ手前)"なのです。

 

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彼らは決して牙を抜かれたわけではありません。 

立ち位置は悪くなったとはいえ、かつての上位層の証明“妨害がなければ安定3キル”に衰えはなく、対策しなければ瞬く間に蹂躙されてしまいます。

“統率者を生かして勝てるようデッキを組みました。高額カードもしっかり入っています”というレベル7相当のフィールドでは彼らとも戦う機会もあるでしょうし、対策はせざるを得ないでしょう。

 

デッキの改造

 

本当に長くなってしまいましたが、最初なので是非とも、いや、どうしてもEDHの変わり様の話をしたかったのです。

昨今1~10までのレベル分けが少しずつ浸透してきたわけですが、周囲のレベルの統率者たちの現状に触れて大まかにレベル感を解説するのはEDH記事を書くために必要な事でしたし、今のEDH環境はどのような流れの中にあるのか、その中で、私たちレベル7ラインのプレイヤーがどんな影響を受けたか、そういった話をまず最初の記事で伝えたかったのです。

 

図らずも《スラーン》は題材としては絶好の統率者でした。他のデッキが細かな調整を施されたり、解体・新造されたりしている中で、彼はEDH用の大型デッキケースの片隅で、当時の構築ほぼそのままで現存していたのですから!

 

まるで生きた化石シーラカンスのような《スラーン》だったわけですが、ここまで環境が変化してしまうと順応していかざるを得ません。

目下の改造コンセプトは先述の《無のロッド》の増加を活かすため、レベル7~8帯にまで降りてきたかつての強者たちにワンチャンスを作るため、「起動型能力を持つアーティファクトに頼らないこと」です。

1ターン目に出して2ターン目に《スラーン》着地という役割を果たす《魔力の墓所》や《太陽の指輪》はともかくとして、《無のロッド》が1/99のレアアイテムだった時代の感覚で装備品を採用することはもうできません。

 

OUT

《精神石/Mind Stone》
《図書館の大魔術師/Magus of the Library》
大薙刀/O-Naginata》
《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》
《審問官のフレイル/Inquisitor’s Flail》
《記憶の仮面/Mask of Memory》
《猪の陰影/Boar Umbra》
《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》
ナルシシズム/Narcissism》
《炎叫びの杖/Fireshrieker》
《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》
《激励/Invigorate》
《樫の力/Might of Oaks》
《圧倒する暴走/Overwhelming Stampede》
《自然の要求/Nature’s Claim》
《捕食/Prey Upon》
《原基の印章/Seal of Primordium》
《ヴィリジアンの堕落者/Viridian Corrupter》
《刻み角/Manglehorn》
《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》
《調和/Harmonize》
《魂の威厳/Soul's Majesty》
《狩られる者の逆襲/Revenge of the Hunted》
《森/Forest》

 

IN

《狼柳の安息所/Wolfwillow Haven》
《硬化した鱗/Hardened Scales》
《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》
《英雄たちの結束/Solidarity of Heroes
《進化増大/Evolutionary Escalation》
《枝分かれの進化/Branching Evolution》
《活性化のうねり/Invigorating Surge》
《ハイドラの成長/Hydra's Growth
《三人組の狩り/Hunting Triad》
《輝き石のイトグモ/Glowstone Recluse》
《自然の祝福/Blessings of Nature》
《ウィーティゴの姿/Shape of the Wiitigo》
《生体性改造/Biogenic Upgrade》
《恵みのスターリックス/Auspicious Starrix》
《原初の力/Primal Might》
《倦怠の宝珠/Torpor Orb》
《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》
《大いなる創造者、カーン/Karn, the Great Creator
《水晶壊し/Gemrazer》
《活性の力/Force of Vigor》
《鋸牙の破砕獣/Sawtusk Demolisher》
《新緑の合流点/Verdant Confluence》
《俗世の教示者/Worldly Tutor》
《眷者の居留地/Bonders' Enclave》

 

アプローチその1: +1/+1カウンター

 

1度載せれば取り除かれる心配が殆ど無いのが強みです。

最初の強化幅は装備品に劣るものの、設置と装備のコスト両方を加味すると実はさほど強化効率が変わらないものも多いです。

 

ひっそりと最新の"ジャンプスタート"から追加された《枝分かれの進化》や《硬化した鱗》などの下準備用カードや、昨今のセットで投入された+1/+1カウンターを2倍にするカード群のお陰で重ねがけした際の強化効率は高めです。

単体でも《高まる残虐性》や《進化増大》は効率がよく、《三人組の狩り》なども密かに+3ラインに合致していますね。

《高まる残虐性》クラスのカードがあと何枚か増えてくれるとベストなのですが。

 

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アプローチその2: 変容

 

妨害をしながらサイズアップやトランプルを付与できる《水晶壊し》と《鋸刃の破砕獣》が中々に優秀です。

各種エンチャントや妨害置物に繋がる《恵みのスターリックス》、他の変容と合わせることでついでにサイズも大きくできる《輝き石のイトグモ》など、総数は少ないものの、変容の重ね張りで一気に効果が高まるところがポイントです。

《俗世の教示者》のサーチに対応しているので、《再利用の賢者》のような枠なのですが、同時にトランプルを付けられると考えるとより《スラーン》に似合ったパーツです。"変容した時"が条件なのでCIP能力を封じる《倦怠の宝珠》に引っかからないのが強みです。

 

《倦怠の宝珠》は現在ではコンボを止めるだけでなく《波止場の恐喝者》《呪文探求者》のようなカードも抑止でき、今の環境だとメジャーカードから意外な所まで様々なところに引っかかる強力な妨害置物となっています。無理なく採用できるなら是非とも挿しておきたいカードです。

 

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アプローチその3: オーラ

 

依然として《活性の力》などの的になるリスクはありますが、装備品よりは遥かに良い選択です。既存の選択肢の中で特に優秀なものをピックアップしています。

軽めの+3/+3修整や《怨恨》のような軽く優秀なカードを始めとして、使用できるマナを増やして強化速度を上げる《熊の陰影》、修正値がとにかく大きい《ブランチウッドの鎧》や《祖先の仮面》など引き続き採用されているカードは粒揃いです。

 

先述の《恵みのスターリックス》で捲れると急激に打点が上がったりすることもありますが、基本的には普通にマナを払いながらペタペタと貼り付けていきましょう。

とはいえ、流石に回した回数が違い過ぎて、二年前の構築と比較するとやはり洗練度の差はありますが……。

 

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《スラーン》EDHを何故崩しもせずに2年近くほったらかしにしていたのかというと、それは取り立てて崩す理由も無かったからです。

デッキレシピをご覧頂けたのなら分かると思いますが、入っているカードの多くは数百円、いや2桁円でも買えそうな専用パーツが大半を占めています。

つまり、「あのパーツを別のデッキで使いたいから崩そう」というような事が起こりにくいのです。事実、《スラーン》以外のデッキは全て別のデッキに改造されましたが、これだけは残りました。

 

崩れずに残って、たまに掘り起こして使いたくなるデッキ。長く付き合えるデッキとは案外こういったものなのかもしれません。何より、お安い事は各々予算に差がある統率者においては明確な強みです。

マナベースには高額パワーカードを惜しまず入れていますが、予算を掛けたくないならば妥協可能な範疇ですし、レベル5以下の卓ならばそもそも入れる必要もないでしょう。

骨子を崩さずデチューンが可能なことから、様々なレベル帯で活躍が見込める良い統率者です。気に入っていただけたら是非お試しください。

 

結び

 

さて、今回は筆者のスタンスの一つでもある“カジュアルな統率者をガチの精神で組む"をテーマとしつつ、初回に相応しくここ数年の環境の変化について、それに伴って大改造を行ったケースをご紹介しました。

 

Twitterの方でレベル6~7程度のデッキの話もそれなりに需要があるというお話を聞いたので書き始めてみましたが、ひどく苦労しました。100枚ハイランダーというのが圧倒的に厳しいです。どこまで説明すればいいのだろう、とか。環境もコミュニティ次第だと難しいなぁ、とか。心配事の尽きないフォーマットですね。

 

冒頭にも書きましたが、EDHは様々なスタンスのプレイヤーがいて、様々な楽しみ方が許容されるフォーマットです。この記事に書かれた事もあくまで一つの目線からの話でしかありませんので、何か少しでも参考になれば、何処か一つ興味深いと感じていただければ、という気持ちで書いています。

 

とはいえ、考える事が多いのは楽しい事の裏返しでもあるわけです。今回の反響(と私自身の環境)次第ではまたこうしたEDH記事を書くかもしれません。次に書くならもう少しコンパクトに纏めておきたいところですね。

 

最後にもう一つ。

EDHのレベル分けに関しては私の友人がとても興味深い記事を書いていましたので、ご紹介しておきます。(余談ですが、彼にはこの記事の作成の際にも色々と相談に乗ってもらいました)

個人的にはかなり真に迫った考察だと思っていまして、レベル分けについての評価基準も概ね公式と彼の解釈に依っています。興味があればこちらも一読していただければと思います。

 

note.com

 

 

というわけで、今回の記事は以上です。

思いのほか(恐ろしいほど)長くなってしまいましたが、楽しんでいただけたなら幸いです。