丸くやわらかい。

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パイオニアから禁止カードの歴史を辿る

2019年10月21日は記念すべき日である。

 

 

待ちに待った新フォーマットが発表された日なのだから。

 

 

 

mtg-jp.com

 

 

新フォーマット! 素晴らしい響きだ。

 

 

過去にも記事で言及した事があるのだが、「Aのフォーマットでは使えないのに、Bのフォーマットでは力不足」というカードはいくらでもある。むしろ、大多数だ。

多くのカードはスタン落ちをした時点で輝きを失い、下の環境で使われるカードは一握りの優秀なカードに限られてしまう。

だからこそ、私はそのAとBの隙間を埋めるようなカジュアルフォーマットが好きなのだが、それを公式がやってくれるならそれ以上の事は無い。

色々なカードにスポットライトが当たるというのは本当に良いことだ。遊び方が増えるというのは本当に歓迎すべき事だ。

 

 

さてさて、新フォーマットはどのような範囲のカードが対象になるのだろうか。

 

 

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(椅子から転げ落ちる)

 

 

 

 

 

 

 

このように、冷静さを失ってしまう程に心配なカードプールが「パイオニア」だそうだ。

 

 

……いや、だが任せてほしい。このカードプールに該当するスタンダードは全て触ったことがある。むしろ世代だ。

確かに「戦乱のゼンディカー」から「破滅の刻」辺りはこの世の終わりというか、無法地帯というか、アルカトラズ島というか、どう贔屓目に見てもヤバそうな空気を漂わせているが、蓋を開けてみれば見知ったカードばかりだろう。心配する事はない。

 

 

しかし、デッキを組もうにも新フォーマット故に情報は全くない。

こういうときは近いフォーマットからインスピレーションを得るのが良い手だとされている。幸い、「基本セット2015」からのカードが使える、晴れる屋独自のフォーマット「フロンティア」が雰囲気としてはかなり近い。

「フロンティア」に「ラヴニカへの回帰」ブロックと「テーロス」ブロック、そして「基本セット2014」を追加したものがパイオニアなわけだ。ならば必然、まずはフロンティアのメタゲームを参考にするのが良いだろう。

 

 

というわけで、晴れる屋のページへ飛び、フロンティアのメタゲームを確認するとしよう。

 

 

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(椅子から転げ落ちる)

 



なるほど!

コイツは参考にならない!

 


基本的にサヒーリと赤単に環境は二分されているようだが、そもそも母数が小さいのでトップメタ以外のデッキの情報はイマイチ信憑性に欠ける。
ただ、サヒーリと赤単が確実に強いということだけは理解できた。これだけでも大きな一歩だと言えるだろう。

 

 

フロンティアのメタゲームを見終えた私は、付近のフォーマットの禁止カードを確認する事にした。強いカードが禁止になるのだから、「他のフォーマットでは禁止されているが、パイオニアでは使える」といったカードがあるならば、それを軸にデッキが作れるかもしれない。禁止カードリストを見るのも立派な情報収集なのだ。

 


イオニア範囲内における下のフォーマットの禁止カードは以下の3枚だ。

 

 

《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》

《時を越えた探索/Dig Through Time》

《宝船の巡航/Treasure Cruise》

 

 

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犯罪者三名といった様相である

 


これらのカードは全て墓地を利用する。《汚染された三角州》のような「フェッチランド」が無ければこれらのカードは十分に機能しない。
1ターン目にマナが出せない《寓話の小道》は同じフェッチランドでも代用品としては不適切だ。フェッチを切って《死儀礼》、そして次のターンから3マナという動きが強かったわけだから、マナクリーチャーとしての確実性が欠如した《死儀礼》は確かにスタンダードレベルの強さに落ち着くだろう。

 

 

イニストラード・ブロックはパイオニアの範囲外だ。
《思考掃き》も《信仰無き物あさり》も「今にして思えばこの辺の墓地肥やす速度は頭おかしかったな」というようなカードは存在しない。それができてしまうとモダン以下で探査ドローが亜光速で禁止された歴史をなぞるだけになるからだ。

 

 

「ドレッジ」レベルにデッキを墓地利用に寄せるか、肥やす枚数の少ないカードで代用するか、本来想定される使い方に則って長期戦を考慮したデッキが後半のアドバンテージソースにするか……少なくとも全盛期のパワーは発揮できないに違いない。
勿論これもフェッチランドが無いことの影響を大きく受けている。
フェッチランド禁止、英断だ。ウィザーズの判断には力一杯の大きな拍手と賞賛を送りたい。

 

 

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墓地を肥やす事の危険性が正しく認知される前のカードであるとも言える

 

 

モダン以下の禁止カードが十分なパワーを発揮できないよう前もって釘を刺されていることは分かった。では、次に見ていくのは上のフォーマットの禁止、あるいは禁止寸前だったカードたちだ。

スタンダードで大暴れしたカードたちはその戦場をパイオニアの領域に移しても変わらず大暴れするのだろうか?

禁止カードの歴史を振り返りながら見ていこうと思う。

 

 

タルキール龍紀伝 ~ イニストラードを覆う影ブロック期

 

・禁止寸前

《集合した中隊/Collected Company》

《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy

《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》

 

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《集合した中隊》《ヴリンの神童、ジェイス》、それに前回の記事でも少し触れた《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》辺りは環境を定義する犯罪者たちだ。
この時期はバント・カンパニーとセレズニア・トークンが環境を席巻しており、「セレズニアポカリプス」とまで形容された寒い時代だった。

 


これらは禁止カードではない。れっきとした「スタンダードを完走した」カードたちだ。

しかし、当時は今よりも禁止を余程のことが無い限りは出さないという風に厳しく扱っていたし、プレイヤーからは禁止を強く望まれていた。レベルとしては後述の禁止カード達と大差はあるまい。

いきなり「イニストラードを覆う影」から始まった時、急に色々飛ばしたなと思っただろう? これより前はめったに禁止カードなんてなかったんだ。今じゃ考えられない事だがね。

 

 

実際、フロンティアでも類まれなカードパワーを見込まれて《ギデオン》や《中隊》はしばしば使われているようだ。この辺りは十分にデッキの選択肢になるだろう。

 

 

戦乱のゼンディカー・ブロック ~ カラデシュ・ブロック期

 

・禁止

《密輸人の回転翼機/Smuggler's Copter》

《反射魔道士/Reflector Mage》

《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》

 

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半年で禁止された《約束された終末、エムラクール》と4ヶ月で禁止された《密輸人の回転翼機》はかなり熱い。
イオニアは《稲妻》環境ではないため、スタンダードに引き続き3点火力を撃つには平均して2マナが必要になる。《致命的な一押し》や《魔術師の稲妻》の流行り方次第ではあるが、軽く、空から殴れて、ルーター能力で手札の質を上げつつ墓地肥やしになる《回転翼機》が弱いという事もないだろう。

 

 

《反射魔道士》は相変わらず異常なテンポの取り方をする強いカードだし、これも全く使われないという事は考えにくい。クリーチャーが使われる限りは《反射魔道士》も使われるだろう。また《中隊》から出てきて人を不愉快な気分にさせるに違いあるまい。

 

 

《エムラクール》は出されたら何もかもグチャグチャにされて終わりといった形のカードだが、勿論フロンティアでも活躍中だ。具体的に言えば、後述の《霊気池の驚異》デッキが、スタンダードで言う「昂揚」とのハイブリッド型の構成をしているため、それで使用されている。

相変わらず出た瞬間に人が死ぬタイプのカードであり、カウンター等の妨害もしにくい。パイオニアでも勿論活躍するだろう。

 

 

戦乱のゼンディカー・ブロック ~ アモンケット・ブロック期

 

・禁止
《守護フェリダー/Felidar Guardian》

《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel》

 

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「《サヒーリ・ライ》とコンボができる事を見逃していた」というあまりにもバカげた、開発の大バカによってこの世に産み落とされてしまった最悪のカード、《守護フェリダー》。

先出し後出しの制約なく3マナと4マナのカード(一緒に出すなら6マナ)で即死コンボができる「サヒーリコンボ」はフロンティアのトップメタとしても君臨しており、下馬評ではおそらくトップメタからの最初の禁止カードになるだろうと予想されている。

 


私も「サヒーリ着地したらもう一生フルタップできねぇのか。とんでもねえぞコイツは」と当時苦言を呈していたものだが、この犯罪者コンビはパイオニアでも元気に人を即死させるであろう事は想像に難くない。

 

 

《霊気池の驚異》(マーベル)もとんでもないカードだ。置いて、ガチャを回す。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》あたりが捲れてゲーム終了。この時期の禁止カードは本当にどうしようもない連中だな。
知性の欠片もないガチャマシーンだが、実際侮れない。直近のフロンティアではあまりいないようだが、少し時代を遡るとフロンティア版マーベルデッキが大量に出てくるので、使う予定の方は参考にすると良いだろう。

 

 

この時代に禁止された2枚はスタンダードに有るまじき高速即死コンボ、所謂アンフェアデッキのパーツであり、その強さは禁止という形で証明済みである。
イオニア最初のデッキを組む上で、仮想敵として「サヒーリコンボ」と「霊気池」はまず想定すべきだと私は思っている。

 


この時代に無かった《夏の帳》がハンデスとカウンターを阻み、《時を解す者、テフェリー》が妨害を寄せ付けないため、そうそう受けに回れるものでもないだろう。強大な敵になることだけは覚悟しておくことだ。

 

 

カラデシュ・ブロック ~ イクサラン・ブロック期

 

・禁止

《霊気との調和/Attune with Aether》

《ならず者の精製屋/Rogue Refiner》

《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon》

《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》

 

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エネルギー・デッキと赤単のパーツだ。
当時はティムール・エネルギー タッチ《スカラベの神》といったインチキじみた4色ミッドレンジが横行しており、《霊気との調和》と《ならず者の精製屋》はその根幹を成す「ノーリスクでエネルギーを補充するカード」たちだ。

基本的にスタンダードとは1〜2色でデッキを組み、リスクを背負って3色デッキを組むくらいのバランスで作られており、余裕で4色出せるようなデッキが出始めている時は何かが壊れている証拠だ。

禁止後もエネルギー・デッキそのものはティムールからスゥルタイカラーに形を変えて生き残っており、そのしぶとさが伺える。

 

 

しかしながら、当時からすると支配的だったエネルギーデッキは、歴史的に見ればあくまでサヒーリ・コンボとマーベルが消え、愚直にアドバンテージを取り合いライフを削るかつてのスタンダードの風景が戻ってきた後のデッキだ。

 


故に高速で即死コンボを揃えたり、重いカードを踏み倒したりするようなアンフェア要素はなく、マナカーブに沿ってただ殴り掛かる構図となる。こうした愚直なミッドレンジデッキが活躍できるような環境かどうかは不明であり、下馬評では他の禁止カードと比較してさほど危険視はされていないようだ。

 

 

しかし、赤単を構成するパーツである《暴れ回るフェロキドン》と《ラムナプの遺跡》は危険度の高いカードであると言えるだろう。

 


当時「ラムナプ・レッド」と名付けられた赤単は《舞台照らし》《批判家刺殺》《殺戮の火》と言った現行スタンでも使用される優良スペルでこれ以上ない程に強化されている。赤単のバリエーションだけでメタを回せるのではないかというくらいにはありとあらゆる赤単の欲するカードが揃っており、その強さに疑問を差し挟む余地はない。

 


先述の通り、赤単はフロンティアでもサヒーリ・コンボと双璧を成す有力アーキタイプとなっており、これは逆説的に「サヒーリ・コンボを相手取って勝負ができるほどに速く、強い」という事だ。パイオニアプレイヤーは先の2デッキと並んでまず仮想敵として考えるべき相手と言えるだろう。

 


また「《熱烈の神ハゾレト》強過ぎだろ!」と切れる日が来るわけだ。涙が零れそうになるね。

 

 

ラヴニカのギルド ~ 現在

 

・禁止寸前

《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》

 

・禁止

《死者の原野/Field of the Dead》

 

・BO1禁止

《運命のきずな/Nexus of Fate

 

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イオニア発表と同時にスタンダードで禁止された《死者の原野》は記憶に新しい。
土地を伸ばすだけで勝ててしまう「ゴロス・ランプ」は現スタンダードで使用率4割を達成し、めでたく最新の禁止カードと相成ったわけだが、その本領はその名に冠する《不屈の巡礼者、ゴロス》とのシナジーではない。
あくまで《ゴロス》は代用カードであり、スタン落ちまでのたった3ヶ月の間しか成立しないデッキだからと禁止を免れた《風景の変容》こそがパイオニアにおける《死者の原野》の相方となるだろう。

 

 

そして、「スケープシフト」と並び立つ《隠された手、ケシス》を軸にしたコンボデッキ、「ケシス・コンボ」も侮れまい。これも登場があと1セット遅かったら間違いなくスタンダード完走はできなかったと言われていた1枚であり、極めてアンフェアだ。
現在モダンを賑わせている《モックス・アンバー》と《湖に潜む者、エムリー》のシナジーも完備している。目下研究中のデッキではあるが、元から支配的な強さがあった上、分かりやすくカードプールが広がる恩恵を受けているデッキという事もあり非常に危険な香りを漂わせている。

 


この時期のスタンダードのアンフェアデッキと言えば「シミック・ネクサス」も外せないだろう。
長らく数多くのスタンダードプレイヤーに不快感を与え続け、メインボードでの対策が困難な事もありBO1禁止カードにもなった《運命のきずな》は、パイオニアにおいても試す価値のあるカードだと思われる。
ひっそりと追加ターンとして《水の帳の分離》が増えており、このデッキなら 《時を超えた探索》も強く使えるだろう。

シミック・ネクサスもまた、研究の余地があるデッキだと思われる。

 

 

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さて、このように禁止カードの歴史を辿ってみると概ね最初に目をつけるべきは

 

バント・カンパニー

サヒーリ・コンボ

マーベル

ティムール・エネルギー

赤単

スケープシフト

ケシス・コンボ

シミック・ネクサス

 

辺りではないか、という事がうすぼんやりと見えてくる。

そして、最低でも仮想敵としてサヒーリ・コンボ、赤単、マーベル辺りは想定しておくべきであるとも。

 


今回は禁止カードの歴史を辿りながらパイオニア初期の環境を予想してみたが、思ったよりもアンフェアなデッキが多そうだ。

 


現状を見る限りでは、禁止か、何らかの革命的なアーキタイプが出てくるまではコンボか赤単かというようなメタゲームになりかねない。

しかし、こうした犯罪者めいたカードたちを使って「近代マジックの業の集大成」ともとれるめちゃくちゃな環境を楽しめるのも初期だけかもし れない。

 

 

モダンも、実装初期は2キル3キル上等で「4ターン以内に勝てないデッキは使うに値しない」とまで言われていたのだから、長期的な展開を望むならばプレイヤーの意見が反映されて段々と丸くなっていくに違いない。

とすれば、この複数のアンフェアデッキがコンボを決め合う危険な環境は今しか楽しめないお祭りに近い状態なわけであり、ある意味では貴重なゲーム体験ができる場なわけだ。

 

 

つまり、私が言いたいことはだ。

 


今のパイオニアは自由だ!
推し犯罪者と共に犯罪行為を楽しもう!